盛ル。その9 ビルマ

もう30年近くも前の事。当時洋裁学校の学生だった私は、学校斡旋のアルバイトで、大きな会社の中の小さなブランドのファッションショー用のアクセサリーを作りに行っていた。そこのデザイナーさんが良くしてくれて、渋谷の線路際の横丁などに飲みに連れて行ってくれた。おせじにもきれいとは言えない店の2階に通され、そこで「これは食べるべし」と出された「ビルマ」という料理。忘れられない美味しさで、帰ってから自分なりに再現した。簡単に言うと、カレーの具材に米粉を付けて揚げたもので、作り方を聞いた訳では無いから、思い出と共に別の料理になっているかもしれない。

 

 

里芋を5つか6つほど。今回は八頭の小芋を使ったが、セレベスやえび芋など里芋の仲間なら何でもおいしいと思う。皮を剥いて大きいものは食べやすい大きさに切って、やっと竹串が刺さる程度に堅めに茹でる。一度茹でこぼし、だし汁300cc(ひたひた程度)に、みりんと薄口大さじ1ずつ、塩小さじ1/2、カレー粉小さじ1を入れ5分ほど煮てそのまま冷ます。芋の水気を切って米粉をまぶし、180℃の油できつね色になるまで揚げる。

この料理、本来は「カレーの具材を揚げたもの」だったのかもしれない。確かひと皿にいくつかの具材があって、それはじゃがいも、にんじん、鶏肉だった?米粉はもっとザクザクしていた?薄れる記憶と流れる時間の中での想像料理だが、いつの間にか私の料理になってしまった。

 


今月の器
牧谷窯 直径18cm 友人からの借り物。
練り込みという、金太郎飴を作るような方法で柄を出した皿。
ギンガムチェック柄はありそうで珍しい。

 


 

 

ubsna

中村宏子/料理家
レシピやお料理にまつわるエッセイを執筆。
ケータリング、イベント出店など。

作ることと美味しいものに目がない。台所を実験室に、五感を総動員して食べ物と向き合う。料理や食事の途中で感動の瞬間を見つけたら、すぐ写真に撮っている。食材から感じる季節、器や道具、そして料理する…エッセイを通じて、”日々作って食べること”のきっかけになったら嬉しい。

 

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Author Little TAO