盛ル。その1 普段着のちらしずし

 

3月3日のひなまつりに、スーパーマーケットでは山のようにちらしずしが並んでいた。ちらっと目を向ければ、錦糸玉子の黄色、桜でんぶのピンク色、いくらと海老のオレンジ色、花形のかまぼこのようなもの、パッケージの柄も手伝ってか大変華やかなものだった。『ひなまつりにちらしずし』は不動の定番か、はたまた消えゆく古い慣習か?ひなまつりもとうに過ぎてから、わたしもちらしずしを作ってみた。
すし飯作りに飯台があればあるに越した事はないが、無くても問題ない。ボウルやバットで代用出来る。実は我が家にも実家から持って来た飯台があるにはあるが、しまい込んでいてなかなか出番が無い。たくさんの量を作るのなら見栄えもいいのだが、少量の為に引っ張りだすのは、後片付けも含めなかなか億劫なのだ。

 

まずは甘酢作りから。世間の甘酢より甘さは控えめだが、すし酢だけでなく甘酢漬け等に色々と使えて重宝するので是非作りおきをおすすめしたい。分量は、米酢100ccに砂糖大さじ2、塩小さじ1を溶かす。金物以外の、プラやガラスの蓋の出来るガラス容器に入れ、常温で保存可能。
2人前につき1合(180cc=150g)の米は約350gのご飯になるから、これに対して大さじ2杯の甘酢をご飯が熱いうちに混ぜる。今回は旬の柑橘、夏みかんの果肉を混ぜたが、季節毎に柚子やすだち、かぼす等を加えても。柑橘を加えるとぐっと奥行きが出る。他に混ぜ込み具材としては、ごま、刻んだ青じそ、ちりめんじゃこ、塩こぶなど身近にあるものをお好みで。
トッピング具材も、ハレの日なら海老やいくらを奮発するのもいいが、ここは普段着のちらすずしなので気負わず自由に、でも彩りだけは考えながら選びたい。ベースにもみ海苔、でんぶ、かんぴょう煮、れんこん梅酢漬け(サッと茹でたれんこんの薄切りを梅酢と蜂蜜に漬ける)、紅大根の甘酢漬け(件の甘酢に漬ける)、菜の花のからし和え(茹でた菜の花をだし汁、うすくちしょうゆ、からしで和える)をのせてみた。定番の卵焼きもいいが、今回は夏みかんの黄色とケンカするのでやめておく。他には、青物なら葉ものからインゲン豆の類までいけそうだし、ひと手間かけて油揚げやしいたけを甘辛く煮たの、手軽にツナ缶、残り物の焼鮭や干物、柴漬け、たくあん等々、ちらしずしにのっけてしまえばなんとか格好がつくものだ。これならいつでも気軽にちらしずしが作れる。

 


今月の器

輪花鉢(monoton ceramic labo.)23cm×19cm×5cm http://monoton-ceramic.com
銀繕い(Little TAO/Tomoko Tsuneda) http://tomokotsuneda.com
monoton ceramic labo.
長い年月を海外で暮らし、そのモノたちが生きてきた何世紀も続く時の流れを感じながら日常を過ごしてきましたお二人。帰国後、奈良県にスタジオを構え二人が見て感じてきたヨーロッパの空気を「陶」という素材で形にすべく日々研究し制作している。テーブルウェアやアクセサリーなど製品ひとつひとつをハンドメイドで制作。
TomokoTsuneda
イラストレーター。器に絵を描くことをはじめてから、金継ぎに出会い繕いの楽しさにハマる。繕いたいとの要望があればワークショップも開催。

 


滅多に作らないけどたまには、シリーズ『でんぶ』
ピンク色のほわほわした繊維質。太巻きに色を添えているあれの正体が白身魚だと知った時の衝撃。しかし意外と簡単に作れる。テフロン加工のフライパンに湯を沸かし、鱈の切り身2切れを入れ2分ほど茹でて取り出し、皮と骨を取り除く。空のフライパンに戻し、酒とみりんと砂糖をそれぞれ大さじ1、塩少々を入れ、ほぐしながら水分を飛ばすと出来上がり(焦げ付きやすいので注意!)。どうしてもピンク色にしたい場合は食紅を少々。

 

 


ubsna

中村宏子/料理家
レシピやお料理にまつわるエッセイを執筆。
ケータリング、イベント出店など。

作ることと美味しいものに目がない。台所を実験室に、五感を総動員して食べ物と向き合う。料理や食事の途中で感動の瞬間を見つけたら、すぐ写真に撮っている。食材から感じる季節、器や道具、そして料理する…エッセイを通じて、”日々作って食べること”のきっかけになったら嬉しい。

 

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Author Little TAO