盛ル。その10 そば米汁

時々玄関先に「ご自由にお持ち下さい」と、”Flea”ならぬ”Free”マーケットを出しているのを見かける。季節柄なのか、年末から春に多い気がする。一応立ち止まってはみるものの、たいていは本当にガラクタばかりで、そう簡単にお宝は見つからない。先日も家の近所で「ご自由にお持ち下さい」が広げられていた。一通り目を通すも、案の定めぼしいものは無いなと思った時、安っぽい食器の中で本物の漆塗りの椀がひとつ目に留まった。少々野暮ったくもあるが、頂いて来た。


冬から春へ。滋味溢れるそば米を使った汁物を。そば米50gを200ccの水に入れて10分ほど煮る。そこへ出汁を足して800ccにし、小さめに切った野菜を加える。野菜は好みだが、大根とにんじんは必須で各50gずつくらい、いちょう切り。他に短いささがきにしたごぼう、小さく切ったこんにゃく、れんこんなど。今回は干した舞茸も入れたが、他のキノコ類でもいい。あれば鶏ひき肉少々を加えればより深い味になる。薄口しょうゆ大さじ1と1/2、塩小さじ1/2で味を調え、10分ほど煮る。

そば米がふやけて、甘くとろんとした味わいの具沢山な汁。青みでみつば、せり、はこべなどを散らせば春の椀に。



今月の器

直径11.5cm 高さ5cm 木地も塗りも厚めでぽってりしている。
「ご自由にお持ち下さい」から過去にもアイスクリームディッシャー、大きめのタルト型(新品だった)、大きなホーローバット等を持ち帰ったが、そう言えば一度も使っていない。意外とそういうものだ。


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中村宏子/料理家
レシピやお料理にまつわるエッセイを執筆。
ケータリング、イベント出店など。

作ることと美味しいものに目がない。台所を実験室に、五感を総動員して食べ物と向き合う。料理や食事の途中で感動の瞬間を見つけたら、すぐ写真に撮っている。食材から感じる季節、器や道具、そして料理する…エッセイを通じて、”日々作って食べること”のきっかけになったら嬉しい。

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Author Little TAO